熊本県宇城市の松橋耳鼻咽喉科・内科クリニックです。めまい、耳鼻咽喉科、内科に対応し、睡眠時無呼吸症候群、舌下免疫療法も行っています。

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論文紹介

めまい関係

1.松吉 秀武, 蓑田 涼生, 須古 和之:自律神経失調症と起立性調節障害を伴うめまい症例についての臨床的検討.Equilibrium Research 65(4);238-244;2006

内容
当科で平衡機能検査と心理テストを行っためまい症例(103例)のうち、43.7%が自律神経失調状態にあった。自律神経失調傾向であるめまい症例は、ほぼ全例(約94%)が問診上OD陽性であった。自律神経失調状態かつ問診上OD陽性であるめまい患者に対してトフィソパムを使用したところ60%の有効率を認めた。さらにシェロングテストを行うことにより本薬剤が効果を示す症例を選別できる可能性が考えられた。通常の平衡機能検査に加え、心理テストおよびODについての精査を行うことにより、めまいの治療効果を高められる可能性が示唆された。

2.松吉 秀武, 蓑田 涼生, 林田 桃子, 湯本 英二:過剰なダイエットにより生じたWernicke 脳症例.耳鼻臨床100(5):335-339; 2007

内容
栄養障害に伴い上眼瞼向き眼振および意識障害、失調性歩行を認めたWernicke 脳症の1症例を経験したので、文献的考察を加え報告した。神経耳科的所見では、注視方向性水平性眼振および頭位、頭位変換眼振検査にて上眼瞼向き眼振を認めた。視標追跡検査では両側saccadic patternであった。視運動性眼振検査では両側眼振数解発不良であった。温度眼振動検査では両耳とも水平方向はほぼ無反応であったのに対し、上眼瞼向き眼振を認めた。以上の結果より脳幹および小脳の広範な障害が推定された。本症の報告数は、減少傾向にあるが、発症要因は多様化している。Wernicke脳症は発症初期での訴えが、ふらつきであることも多く、短期間の絶食で急激に発症することもある。平衡障害、摂食および嚥下障害を扱う耳鼻咽喉科医は本症を常に念頭に置くべきである。

3.松吉 秀武, 蓑田 涼生, 湯本 英二:聴力像に左右差のない聴神経腫瘍4症例:耳鼻咽喉科・頭頸部外科80(2):127-132; 2008

内容
純音聴力検査にて左右差がない聴神経腫瘍4症例を報告した。同検査にて左右差がない場合に、見落としなく聴神経腫瘍を診断するには神経学的所見をとり、めまい訴えがなくてもフレンツェル眼鏡下に眼振所見をとるべきである。またカロリックテストにて半規管麻痺を認めた場合は本症を疑いMRIを行うべきと考えた。

4.松吉 秀武, 蓑田 涼生, 湯本 英二:熊本県における良性発作性頭位眩暈症例の検討:耳鼻臨床101:905-912、2008

内容
熊本県における良性発作性頭位眩暈症(BPPV)診療の現状についての検討を行った。障害部位については、外側半規管型(半規管結石型)、後半規管型、外側半規管型(クプラ結石型)、前半規管型の順に多かった。本検討では対象施設のほとんどがBPPV症例がまず受診すると思われる無床診療所と一次救急病院であり、今回の結果がBPPVの実態をより反映したものではないかと考えた。理学療法については、後半規管型に対しては主にEpley法が、外側半規管型(半規管結石型)に対しては主にLempert法が行われていた。理学療法は、BPPVのうち後半規管型、外側半規管型(半規管結石型)のBPPVにおいて有効であった。外側半規管型(クプラ結石型)のBPPVについては理学療法を行わなくても症状が改善する傾向にあった。

5.松吉 秀武, 蓑田 涼生, 須古 和之:当科における両側半規管麻痺症例についての臨床的検討.Equilibrium Res 67:101-107、2008

内容
当科で平衡機能検査を行っためまい症例(279例)のうち、36例(約13%)が両側CP(半規管麻痺)であった。両側CPの内訳としてはメニエール病が多く、従来多いとされていた耳毒性薬物による症例は少なかった。高度CP群は、軽度CP群と比較して、有意に閉眼時の体平衡が障害されていた。一方、ADL評価には差がなかった。両側CPであっても、末梢前庭機能が残存しているほど体平衡は保たれており、高度CPに移行させないような対応が必要であると考えた。

6.松吉 秀武, 蓑田 涼生, 増田 聖子, 梶原 薫子, 湯本 英二:蝸牛、前庭症状を初発症状とした肺癌の内耳道転移例 耳鼻臨床102:91-97、2009

内容
蝸牛前庭症状を初発症状として発見される悪性腫瘍は稀である。耳鳴とふらつきを初発症状として、肺癌の内耳道転移と診断された症例を経験した。症例は39歳女性。左耳鳴とふらつき感が出現し、当科を初診した。純音聴力検査では左高音急墜型の感音性難聴であった。ステロイド内服を開始したが聴力は増悪した。MRIにて左内耳道内に腫瘤性病変を認め、全身検索にて肺癌の内耳道転移による蝸牛前庭症状と診断した。本報告の如く蝸牛前庭症状を主訴として耳鼻咽喉科を受診し、原発が肺癌であると判明したのは、本邦では初めての報告である。治療に抵抗して聴力が増悪する場合は、内耳道の腫瘍性病変も鑑別にあげるべきと考えた。

7.松吉 秀武, 蓑田 涼生, 三輪 徹、須古 和之:大学病院における最近のめまい症例についての臨床統計.Equilibrium Research 68(4); 208-213; 2009

内容
当科における最近のめまい症例の臨床統計を行った。疾患頻度としては他施設と同様に良性発作性頭位めまい症(BPPV)とメニエール病を多く認めた。BPPVについては治癒までの期間が遷延するとされる外側半規管型BPPV(クプラ結石型)を多く認めた。メニエール病については高度には外側半規管機能が障害された症例を多く認めた。両側CP症例も多く存在していた。このように大学病院には各めまい疾患のうち難治例が集積しており、今後これらの疾患への対応が必要である。

8.松吉 秀武, 蓑田 涼生, 三輪 徹、須古 和之:温度刺激検査時のめまい症状に影響を与える諸因子に関する検討.Equilibrium Research 68 (6); 424-429; 2009

内容
本報告では健常人を対象として温度刺激検査により誘発されるめまい感と、自律神経症状、心理テストおよび起立性調節障害(OD)との関係を検討した。温度刺激検査によって回転感を自覚した耳では、横に流される感じを自覚した耳に比べて、Graybielの動揺病スコアを参考とした自律神経症状スコアが有意に上昇していた。また回転感を自覚した耳において眼振持続時間が有意に延長していた。心理テスト、ODについての問診では、両耳とも横に流れる感じを自覚した群と比較して、両耳とも回転感を持続した群において、有意に抑うつスコアが高く、ODを多く認めていた。一方、自律神経失調傾向、不安傾向には有意な関与を認めなかった。

9.松吉 秀武:ベッド型マッサージ器®(QZ-220)を用いた水平(外側)半規管型良性発作性頭位めまい症クプラ結石症の治療成績:Equilibrium Research 70 (1); 10-16;2011

内容
今回、難治性とされている水平(外側)半規管型BPPVクプラ結石症に対しての新規の治療方法を試みた。具体的には消炎鎮痛治療として整形外科領域にて保険適用として使用されているベッド型マッサージ器®(QZ―220)10)を用いて頭部刺激を行った。この直後にBrandt-Daroff法を行うことで治療を行った。この結果、比較的良好な治療成績が得られたので報告した。本療法翌日には、25例中8例で自覚症状と眼振が消失していたこと、また本報告では治療後の自覚症状と眼振の消失した日数が平均5.3日であり、Brandt-Daroff法のみで加療を行った他の報告(平均12.8日や59日)よりも短かったことから、ベッド型マッサージ器®(QZ―220)とBrandt-Daroff法を組み合わせた本療法は効果を発現したものと考えた。

10.松吉 秀武:診療所における良性発作性頭位めまい症例の特徴:Equilibrium Research 70 (6); 481-488; 2011

内容
めまいの臨床検討を行う場合、対象施設によって疾患頻度に大きな違いが存在している。最近の大学病院からの報告においては難治性疾患や治癒が遷延している症例が集積していると考えられる。市中病院からの報告においては急性期や症状が強いめまい疾患が集積していると考えられる。これに対して、より一次診療としてのめまい診療の実態を反映していると考えられる耳鼻咽喉科診療所からの報告は比較的少ない。今回、耳鼻咽喉科無床診療所における良性発作性頭位めまい症(以後BPPVと略)を中心とした最近のめまい症例の特徴について検討した。具体的には、BPPVの障害部位、治療経過、再発症例およびBPPV症例に対する頭部CT検査の施行状況について検討した。BPPVの障害部位は、外側半規管型(半規管結石型)、後半規管、外側半規管型(クプラ結石型)、前半規管型の順に多かった。理学療法は、全ての障害部位のBPPVに対して有効であった。BPPVの再発率は約40%であり、経過観察および再発予防が必要であると考えた。BPPVに対して、当院受診前に一般内科クリニックを含めた前医にて必要性が低いCT検査が約50%の症例に対して行われていた。眼振所見にてBPPV診断が可能である耳鼻科医師の役割が、BPPV診療において重要であることが示唆された。

11.Toru Miwa、Ryosei Minoda、and Hidetake Matsuyoshi:Vestibular function in superficial siderosis.BMC Ear、Nose and Throat Disorders; 2013 Apr 23;13(1):5 pages (open access article)

内容
脳表ヘモジデリン沈着症(Superficial Siderosis:SS)は、くも膜下腔への繰返しまたは連続的な出血によって脳の表面に堆積されているヘモグロビン(ヘモジデリン)か引き起こされます。臨床的に、条件は難聴、運動失調、および錐体路障害によって特徴付けられます。しかし末梢前庭障害へのメカニズムは明らかにされていない。今回、脳表ヘモジデリン沈着症患者の前庭機能と球形嚢-下前庭神経に着目した。過去9年間MRIにて脳表ヘモジデリン沈着症と診断され患者5名に対して平衡機能検査を施行した。前庭誘発筋電位(VEMP)は、病脳期間が長いほど低下する傾向にあった。結論としてヘモジデリン沈着症患者ではVEMPは、疾患の初期の段階で維持されるが、病脳期間が長いほど低下することが判明した。我々の研究は、脳表ヘモジデリン沈着症のメカニズムを解明に役立つかもしれない。

12.Hidetake Matsuyoshi and Hidenori Goto:A Rare Case of an Acoustic Tumor Diagnosed in an Elderly Patient with Atypical Nystagmus .Journal of Case Reports in Medicine; Volume 2 (2013)、Article ID 235749、4 Pages (open access article)

内容
非定型的と思われる良性発作性頭位めまい症と類似した眼振所見を呈した高齢の聴神経腫瘍患者の1症例を報告した。

13.松吉 秀武, 後藤 英功:良性発作性頭位めまい症と鑑別が困難であった聴神経腫瘍症例:耳鼻咽喉科・頭頸部外科 85 (4); 363-366; 2013

内容
聴神経腫瘍(vestibular schwannoma:VS)の経過中での前庭、蝸牛症状などの臨床症状の発症は30%程度とされている。また聴力が正常あるいは左右差がない場合に腫瘍の診断に至る症状としての重要な症状はめまいとされており、めまいを訴える症例では常にVSの可能性を念頭に置く必要がある。今回、頭位変換時の回転性めまいと吐き気にて発症し、良性発作性頭位めまい症(benign paroxysmal positional vertigo:BPPV)に類似した眼振所見を認めた比較的稀なVSの1症例を経験したので報告した。

14.松吉 秀武: 身体表現性障害とめまい: Equilibrium Research 73 (4); 220-221; 2014

内容
精神疾患によるめまいと診断されるめまい外来患者は5-30%を占めるとの報告があり、大学病院では6%、耳鼻咽喉科診療所である自験例では1.3%であった。施設ごとに診断方法、また診断する医師の違いにより、精神疾患によるめまいとされるものの頻度にはある程度のばらつきが存在しているのが現状である。しかし、ストレス社会の中、今後精神疾患によるめまいとされる疾患は増えてくるものと推察される。このため、耳鼻咽喉科医としても、治療可能な精神疾患によるめまいと、治療が困難なめまいとを鑑別し精神科専門医に治療を依頼すべき疾患をしっかりと理解しておくことが重要と考える。精神疾患によるめまいには、以下のごとく主に3つに分類されているが、治療面から考慮すると、身体表現性障害に伴うめまいが薬剤難治性とされており、同疾患の鑑別と診断が重要になると考えられる。

15.松吉 秀武:所見に乏しいめまい症例に対する睡眠障害の関与についての検討:Equilibrium Res Vol.72 (4) 196-200、2014

内容
めまい症例に対して耳鼻咽喉科診療所での日常診療にて行われている神経学的検査、眼振検査、聴力検査に異常がない症例を「原因不明のめまい症例」としてこれに対する、原因の精査を行った。所見の乏しいめまい疾患としては表18)の如き疾患があげられている。今回の検討では図1の如く、原因が明らかなBPPV症例と比較し、原因不明のめまい症例において有意差をもってESSスコアが有意に高値であった。このためOSASを含めた睡眠障害が原因不明のめまいに含まれているのではないかと考えた。

16.松吉 秀武:急性めまい症例に対して即時に行う温度刺激検査の有効性についての検討:Equilibrium Res Vol.74(3) 166-173、2015

内容
急性めまい症例71例に対して即時に温度刺激検査を行うことにより、21例(29.5%)の前庭神経炎を診断することが可能であった。前庭神経炎に対するステロイド投与の効果は、最大緩徐相速度が投与後2週目から有意に改善し、DHIを用いためまいによる日常生活障害は4週目から有意に改善してくることが判明した。前庭神経炎症例に対して、早期に治療を開始すればステロイドを使用すること、またステロイドを使用できない合併症のある症例に対しては発症からより早期にジフェニドールを使用することで、良好な予後をもたらすことが可能であることが判明した。

17.下眼瞼向き眼振を呈した17症例の臨床的検討:松吉 秀武, 後藤 英功, 三輪 徹、栗崎玲一:耳鼻咽喉科・頭頸部外科 88 (7); 513-518; 2016

内容
2008年8月から2015年4月までにめまいを主訴に当院を初診した症例の内、17例に下眼瞼向き眼振を呈した症例を認めた。性別は男性11例、女性6例であった。同眼振は約40%が特発性で原因不明とされているが、前庭小脳の障害により発現することが多く、同部位の障害による上前庭神経核の上行性ニューロンの脱抑制が発症機序とされている。今回当院における同眼振を認めた症例ついての臨床的検討を行った。下眼瞼向き眼振を認め、歩行時のふらつきが強く、視標追跡検査にて失調性パターンを呈した症例については神経内科を紹介し、3例がMRIおよび神経学的所見により、脊髄小脳変性症と診断された。内訳は皮質性小脳萎縮症、脊髄小脳変性症6型(遺伝子診断にてSCA6)、多系統萎縮症がそれぞれ1例であった。他の症例は経過をみているうちに後半規管型良性発作性頭位めまい症(BPPV)に移行した症例が2例、水平(外側)半規管型BPPVに移行した症例が2例であった。聴力像、治療および臨床経過からメニエール病として治療することで治癒した症例を2例認めた。他の8例については原因不明であった。耳鼻咽喉科医による神経耳科学的検査は脊髄小脳変性症を診断するにあたり有効であると判断された。同疾患は近年、薬物療法、リハビリテーションなどによる治療が進歩しており、早期発見が可能な耳鼻咽喉科医の役割が重要と考えられた。

18.松吉 秀武, 三輪 徹:熊本地震後めまいに対する心理的因子と環境因子に着目した臨床的検討:Equilibrium Res Vol.75(4) 189-200、2016

内容
熊本地震の本震発生から3日後の2016年4月19日から2016年5月14日までの約1カ月間を対象期間とした。対象症例を以下のごとく3つに群分けした。今回の地震後にめまいが増悪し、受診予定日以前に当院を再診した74症例を地震後めまい増悪(+)群とした。これまでにめまいの既往がなく、地震後に初めてめまいを自覚しためまい新患34症例を地震後めまい発症群とした。地震後にめまいの増悪はなく定期受診日に当院を再診しためまい症例106例を地震後めまい増悪(-)群とした。地震後めまいと動揺病(小児期と成人後の乗り物酔い)との関係について検討した。小児期の乗り物酔いのしやすさを、そのまま成人後も継続している症例に地震後めまい増悪(+)群、地震後めまい発症群が多かった。このことから成人しても前庭への刺激に対する適応がうまく進んでいない症例に地震後めまいは発症しやすいものと考えられた。地震後めまい後の心理状態について各種心理テストを行った、地震後めまい増悪(+)群において神経症は39.1%、自律神経失調が44.6%、心身症が31.1%、うつ状態が17.6%存在していた。地震後めまい発症群において神経症は41.1%、自律神経失調が58.8%、心身症が29.4%、うつ状態が23.5%存在していた。今回の地震後めまい増悪(+)群および地震後めまい発症群では過去のめまい症例に対する心理テストと比較し、神経症、うつ状態の割合が約2倍であり、自律神経失調、心身症は同程度であった。これより、地震後めまい増悪(+)群と地震後めまい発症群の心理的要因として、神経症、うつ状態が強いものであると考えられ、これらに対する対応が重要となってくると考えられた。不安傾向を反映する心理テスト(STAI)では地震後めまい増悪群(+)群においては、状態不安 (現在抱えている不安、ストレスの強さ)が、64.9%、特性不安(性格的に不安やストレスを抱えやすいか)が40.5%と、状態不安が有意差をもって高かった(0.001 < p < 0.01)。地震後めまい発症群においては、特性不安と特性不安の高さには有意差はなかった。地震後めまいと生活環境では、地震後めまい増悪(+)群、地震後めまい発症群ともに有意差をもって、自宅生活の症例が少なく、車中泊または避難所の症例が多いという結果であった。以上の結果から、神経症、自律神経失調、心身症、うつ状態、不安傾向に対するカウンセリングや薬物療法が必要であると考えられた。また生活環境において車中泊、避難所生活から解放できる対策を早期に行うことが行政面からの対応として必要であると考えた。

19.松吉 秀武, 後藤 英功, 三輪 徹:末梢前庭性めまいと鑑別を要した小脳腫瘍の1症例:耳鼻咽喉科・頭頸部外科 89 (4); 361-365; 2017

内容
初診時、眼振所見、純音聴力検査所見より末梢前庭性めまいを考えたが、神経学的所見に異常を認め、緊急の頭部CT所見より、Waldenströmマクログロブリン血症の小脳浸潤と診断した症例を経験した。中枢神経系由来の同疾患は比較的まれであり、めまい患者の初診時には詳細な神経学的所見と、問診を取りながら、同疾患を念頭に置く必要があると考えられた。また神経学的異常が認められた場合には迅速な画像診断を行い、耳鼻咽喉科診療所においては適切な医療施設との連携が必要であると考えた。

20.松吉 秀武,:前庭神経炎に対する能動的頭振後眼振検査の有効性についての検討.Equilibrium Research 77(3); 152-157; 2018

内容
HSNT(頭振後眼振検査)は簡便的に一側性内耳障害を評価する上で有効な検査である。しかし高齢化社会において他動的にHSNTを行うことは、合併症を引き起こす可能性がある。このため、患者自身によって頭振りを施行してもらうVHSNT(自動的頭振後眼振検査)と温度刺激検査を併せて行った。急性めまい症例を、VN(前庭神経炎)群と突発性めまい群とに群分けし、VNの診断におけるVHSNTの有効性について評価した。VHSN(自動的頭振後眼振検)は、突発性めまい群と比較し、VN群に有意に発現率が高かった。またVHSNTによる合併症もなかった。このことからVHSNはVNを簡易的に鑑別するのに有効かつ安全な検査であると考えられた。

21.松吉 秀武, 後藤 英功:病歴から判断した椎骨脳底動脈循環不全に対する複数の薬剤併用療法の有効性についての検討:耳鼻と臨床64巻3号; 77-86、2018

内容
VBIは耳鼻咽喉科診療所においては、確定診断が困難である。また治療方針も確立されていないのが現状である。このため、日本めまい平衡医学会にて作成された「めまいの診断基準化のための資料」の「病歴からの診断」に基づきVBIを診断し、重症度のスコアリング(VBIスコア)を行った。治療は、A群(ATP+塩酸ジラゼプを投与)、B群(ATP+イブジラストを投与)、C群(ATP+塩酸ジラゼプ+イブジラスト投与)に分け内服治療を行った。3群ともに初診時のVBIスコアに有意差はなく、これら3群の中では治療開始から2週後、2週後から4週後ともにVBIスコアの改善に有意差がある群と、そうでない群とが存在していたが、3群とも同スコアは改善傾向にあった。3剤を使用したC群のみは初診時から2週後、2週後から4週後ともにVBIスコアが有意に改善していた。初診時、2週後、4週後のVBIスコアおよびDHIスコアについて3群間について統計を行ったが、それぞれの群間に有意差はなかった。ただし、3剤を使用したC群のみは、DHIスコアが初診時から2週目、2週目から4週目にかけても有意な改善がないにもかかわらず、VBIに特異的症状に着目したVBIスコアが初診時から2週後、2週後から4週後ともに有意に改善していた。また初診時から4週目でのVBIスコアとDHIスコアの改善値について有意差はないものの両スコアともC群の改善値が3群の中では最も大きかった。このため3群のうちC群がVBIに対しては適した治療ではないかと考えられた。

22.松吉 秀武, 後藤 英功:病歴から診断した椎骨脳底動脈循環不全に対する複数の薬剤併用療法におけるトフィソパムとジフェニドールの有効性についての検討.耳鼻と臨床 65巻3号; 39-48、2019

内容
耳鼻咽喉科診療所おいてVBIは、診断が困難で治療方針も確立されていない。われわれは日本めまい平衡医学会にて作成された「めまいの診断基準化のための資料」の「病歴からの診断」に基づきVBIを診断し、VBIスコアを用いて、ATP+塩酸ジラゼプ+イブジラスト投与がVBIに適したことを報告した。今回トフィソパムとジフェニドールの有効性を検討した。前報告に継続し、D群(ATP+イブジラスト+トフィソパム)とE群(ATP+ジフェニドール)の2群に分け、比較した。D群はVBIスコアに相乗効果はなく、DHIスコアではD群ではB群(ATP+イブジラスト)と比較し、初診時から2週後にかけて、有意に改善した。E群ではVBIスコアは初診時から2週後に有意に改善し、初診時から4週目にも有意に改善した。4週後の同スコアは、C群(ATP+塩酸ジラゼプ+イブジラスト)と同程度であった。DHIスコアは初診時から4週後までの同スコアの改善値は15.7±22.4点で、C群の25.0±26.4点に劣った。ジフェニドールはVBI特有の症状改善には有効であるが、DHIの改善効果は低かった。

23.松吉 秀武:椎骨脳底動脈循環不全の診断の一助となる問診チェックリスト作成の試み.耳鼻咽喉科・頭頸部外科 90 (13); 1157-1163; 2018

内容
日本めまい平衡医学会にて作成された「めまいの診断基準化のための資料」の「病歴からの診断」に基づきVBIを診断するための問診チェックリスを作成した。これを数値化しVBIスコアとした。その有用性を評価するために DHIスコアを対照とした。これまでVBI診断のために問診チェックリストによりVBIの診断と重症度を数値化した報告はなく、VBIスコアの有用性について比較検討した。問診チェックリストから診断したVBIに対して、VBIの治療に有効とされるATPとイブジラストを併用することで、めまいの日常生活障害を示すDHIスコアに有意な改善を認めなかったにもかかわらず、治療開始時から2週後にかけてVBIに特徴的な症状であるVBIスコアの有意な改善作用を示した。このため、VBIスコアは耳鼻咽喉科診療所において簡便に問診チェックリストからVBIを疑うため一助となると考えられた。

24.松吉秀武, 山田卓生, 後藤英功: 病歴から診断した椎骨脳底動脈循環不全に対する肩こりの評価とその治療の有効性の検討. 耳鼻と臨床 67巻2号: 63-74, 2021

内容
VBIは耳鼻咽喉科診療所にて、診断が困難な場合があり、現在、治療も確立されていない。日本めまい平衡医学会が作成した「めまいの診断基準化のための資料」の「病歴からの診断」にてVBIを診断、重症度のスコアリング(VBIスコア)を行った。今回、VBIの発症と重症化要因に、肩こりの関与の有無を検討した。めまい発症時に肩こりの検討をしていないVBI症例にATP +イブジラストにて加療を行ったA群と、めまい発症時に肩こりを自覚していたVBI症例にATP +イブジラスト+エペリゾン塩酸塩+キセノンレーザーにて肩こり加療を追加したC群とを比較した。治療開始前のVBIスコア、DHIスコアは、C群が有意差をもってA群より高値であった。4週後、両群の間に両スコアとも有意差はなかった。付加した肩こり治療は有効であった。C群の僧帽筋の筋硬度は初診時から4週後に有意差をもって改善し、今回の結果を支持していた。

25.松吉秀武, 山田卓生, 後藤英功: 耳鼻咽喉科診療所における小児めまい症例についての臨床的検討 . 耳鼻と臨床 67巻4号: 219-227, 2021

内容
立ちくらみや、近年問題となっているスマートフォンやゲームなどの視覚刺激に伴う入 眠障害、中途覚醒による睡眠の質の低下、およびストレスの有無、片頭痛の有無などの日 常生活習慣についての問診を行い、小児めまい発症の原因を調べることを目的とした。小 児めまい症例 70 例と、めまいを自覚したことのない小児 60 例を対照として、めまいと日 常生活についての問診を行い、比較検討を行った。日常生活の問診では、小児めまい症例 において、めまいがない症例と比較し、有意に、入眠障害や中途覚醒などの睡眠障害を多 く認めた。慢性的な睡眠障害が自律神経失調を生じ、起立時の循環制御の調節不全を起こ し起立性調節障害を来したものと考えた。小児めまい症例は、めまいのない症例と比較し て、有意に、片頭痛を多く認めた。また小児めまい症例において、めまいがない症例と比 較し、有意に、学校などへの遅刻を多く認めていた。日常生活において入眠障害や中途覚 醒を改善し、睡眠状態を改善すること、起立性調節障害と片頭痛の早期発見、早期治療が、 小児めまいを改善させ、学校への遅刻などの社会不適合を減らしていくために重要である と考えた。

26.松吉秀武, 山田卓生, 後藤英功: 持続性知覚性姿勢誘発めまいに対する少量セロトニン吸収阻害剤の有効性についての検討 . 耳鼻と臨床 68巻4号: 251-257, 2022

内容
われわれは、持続性知覚性姿勢誘発めまいPersistent Postural-Perceptual Dizziness (以下PPPDと略)に先行する疾患についての検討、および少量の選択的セロトニン吸収阻害剤Selective Serotonin Reuptake Inhibitor(以下SSR Iと略)を投与し、PPPD治療に対する有効性の検討をおこなった。少量SSRI(Sertraline 12.5mg)投与を行うに当たり、Niigata PPPD Questionnaire (以下NPQと略)を用い、このNPQ値を治療効果の指標とした。また少量SSRI投与による副反応と治療継続率の検討をおこなった。PPPDの先行疾患は末梢性と中枢性前庭疾患が69.6%、片頭痛関連めまいが17.4%、起立性調節障害が11.6%、原因不明が1.4%であった。PPPDに対する少量SSRI投与の有効率は75.9%であった。副反応出現率は23.1%、治療継続率は79.2%であった。副反応を減らしながら、これまでの報告との同程度の治療継続率と治療の有効率を得ることができた。少量SSRI投与はPPPD治療に積極的に施行していくべきと考えた。

27.松吉秀武, 山田卓生, 後藤英功, 伊藤恵子: 持続性知覚性姿勢誘発めまいのサブタイプごとの少量選択的セロトニン再取り込み阻害剤の有効性についての検討 . 耳鼻と臨床 69巻1号: 16-25, 2023

内容
われわれは既にPPPDに対する少量SSRI療法の有効率は75.9%であることを報告している。これまでにPPPDのサブタイプごとのSSRIによる治療成績の報告はまだされておらず、今回の報告が初めてである。少量SSRI療法はPPPDの全てのサブタイプ(視覚刺激優位型、能動運動優位型 、混合型)に対して有効であった。特にDHIスコアが高値であった視覚刺激優位型は難治性と考えられたが、同療法によるNPQ値の改善の程度が、能動運動優位型と比較し、有意に高かった。このことから視覚刺激優位型は治療開始前の重症度が高いが、少量SSRI療法が有効であると考えられた。また先行疾患するめまい疾患がODである症例では有効性が期待されると考えられた。

28.松吉秀武, 山田卓生, 後藤英功, 伊藤恵子:前庭性片頭痛に対する短期的な片頭痛予防薬の有効性についての臨床的検討. 耳鼻と臨床 69巻5号: 350-356, 2023

内容

2022年6月から 2023 年 2 月までめまいを主訴に、当院を受診した症例は 1222 例であった。片頭痛の一次スクリーニングによる片頭痛症例は205例であり、全めまい症例の16.8%であった。片頭痛症例のうち前庭性片頭痛 (以下 VM と略 )確実例は 60 例であり、全めまい症例の4.9%であった。初診時から4週間経過を追跡できたVM確実症例 28 例に対してミグシスⓇ単剤投与の有効性を検討する前向き研究を行った。頭痛の評価方法としては、治療開始前2週間の鎮痛剤使用回数と、治療開始後2週目から4週間後までの鎮痛剤使用回数を指標とした。この結果、頭痛の改善率は 28.6%であった。効果が不十分であり、他の予防薬 との併用、長期的な治療が必要であると考えられた。めまい症状の評価方法としては、めまいによる日常生活の障害度のアンケート(以後 DHI スコアと略)を用いた。DHI スコア は初診時が平均 44.2±23.2 点、 4 週目が平均 25.1±23.4 点であった。初診時と4週目の間には有意な改善を認めた(p=0.001)。Jacobson GPらの報告に基づくと、有意な改善率は46.4%であった。このようにVMに対しては、片頭痛予防薬のみでは、頭痛、めまいともに難治性であるため、長期的な加療が必要であると考えた。近年VM に対する前庭リハビリテーションについて,有効性が報告されており、今後取り入れていくべき治療であると考えた。

腫瘍免疫関係

1.Matuyoshi H、Senju S、Hirata S、Yoshitake Y、Uemura Y、Nishimura Y.Enhanced priming of antigen-specific CILs in vivo by embryonic stem cell-derived dendritic cells expressing chemokine along with antigenic protin:application to antotumor vaccination.J.Immunol 172:776-786、2004

内容
樹状細胞(DC)に抗原遺伝子と共にケモカイン遺伝子を発現させることにより、生体内に移入したDCの存在する局所へT細胞を遊走させ、抗原特異的免疫応答を増強できるか否かを検証する。さらにモデル抗原を発現させた腫瘍を拒絶する免疫応答の誘導能について比較検討した。モデル抗原OVAを発現させたES-DCを腹腔内投与することにより、OVAを強制発現させたB16メラノーマに対する有意な腫瘍増殖抑制効果が観察された。さらにSLCを発現させることにより、その効果が著明に増強された。抗原およびケモカイン遺伝子を共発現させたES-DCを使用することにより、抗原特異的免疫増強療法が可能であり、抗腫瘍免疫療法に利用できるものと考えられた。

2.Matuyoshi H、Senju S、Hirata S、Yoshitake Y、Fukuma D、Motomura Y、Nishimura Y.Cancer immunotherapy by genetically modifed embryonic stem cell-derived dendritic cells.Immunology 2004 (Theproceeding of the 12th International Congress of Immunology、ed.By Skamene、E.)Medimond S.r.l.(Bologna、Italy) 487-491、2004

内容

3.Yoshitake Y、Nakatsura T、Monji M、Senju S、Matsuyoshi H、Hirotake T、Hosaka S、Komori H、Fukuma D、Ikuta Y、Katafiri T、Furukawa Y、Itoh H、Shinohara M、Nakamura Y、Nishimura Y.Proliferation potenial-related protein、an ideal esophageal cancer antigen for immunotherapy、idenified using cDNA microarray analysis.Clin.Cancer Res.10:6437-6448、2004

内容

4.Matsuyoshi H、Hirata S、Yoshitake Y、Motomura Y、Fukuma D、Kurisaki A、Nakatsura T、Nishimura Y、Senju

内容

5.Therapeutic effect of alpha-galactosylceramide-loaded dendritic cells genetically engineered to express SLC/CCL21 along with tumor antigen against peritoneally disseminated tumor cells. Cancer Sci.2005 Dec; 96(12):889-96.

内容
マウスにおいて、モデル抗原OVA(卵白アルブミン)を発現するメラノーマ細胞MO4を皮下あるいは腹腔内に投与し、3日後にα-GalCerを負荷した遺伝子導入ES細胞由来の樹状細胞(ES-DC)を腹腔内に投与し、生存率を観察した。α-GalCerを負荷したES-DCおよびα-GalCerを負荷していないOVA発現ES-DC(ES-DC-OVA)は、腹腔内腫瘍に対して低い効果を示していた。一方、α-GalCerを負荷したES-DC-OVAは有意差を持って生存期間を約2倍延長させる効果を示し、さらに、SLCをOVAと同時に発現するES-DCにα-GalCerを負荷したものを用いると、治療したマウスの40%が腫瘍細胞を拒絶するという効果が観察された。腫瘍特異抗原を発現させた樹状細胞にα-GalCerを負荷し生体内に投与する治療法が、腹膜播種した悪性腫瘍の治療に有効である事、SLCを腫瘍抗原と同時に発現するES-DCを治療に用いることにより、治療効果を高められることが示された。

6.Motomura Y、Senju S、Nakatsura T、Matsuyoshi H、Hirata S、Monji M、Komori H、 Fukuma D、Baba H、Nishimura Y.Embryonic stem cell-derived dendritic cells expressing glypican-3、a recently identified oncofetal antigen、induce protective immunity against highly metastatic mouse melanoma、B16-F10.Cancer Res.2006 Feb 15; 66(4):2414-22.

内容

7.松吉 秀武, 千住 覚, 西村 泰治:抗原とケモカインを共発現させたES細胞由来の樹状細胞を用いた抗腫瘍免疫療法.臨床免疫 42:110-114、2004

内容
樹状細胞(DC)に抗原遺伝子と共にケモカイン遺伝子を発現させることにより、生体内に移入したDCの存在する局所へT細胞を遊走させ、抗原特異的免疫応答を増強できるか否かを検証する。さらにモデル抗原を発現させた腫瘍を拒絶する免疫応答の誘導能について比較検討した。モデル抗原OVAを発現させたES-DCを腹腔内投与することにより、OVAを強制発現させたB16メラノーマに対する有意な腫瘍増殖抑制効果が観察された。さらにSLCを発現させることにより、その効果が著明に増強された。抗原およびケモカイン遺伝子を共発現させたES-DCを使用することにより、抗原特異的免疫増強療法が可能であり、抗腫瘍免疫療法に利用できるものと考えられた。

8.松吉 秀武, 千住 覚, 増田 聖子, 湯本 英二, 西村 泰治:α-GalCerを負荷した遺伝子導入ES細胞由来の樹状細胞による抗腫瘍免疫の誘導.耳鼻咽喉科免疫アレルギー25:85-86:2007

内容
マウスにおいて、モデル抗原OVA(卵白アルブミン)を発現するメラノーマ細胞MO4を皮下あるいは腹腔内に投与し、3日後にα-GalCerを負荷した遺伝子導入ES細胞由来の樹状細胞(ES-DC)を腹腔内に投与し、生存率を観察した。α-GalCerを負荷したES-DCおよびα-GalCerを負荷していないOVA発現ES-DC(ES-DC-OVA)は、腹腔内腫瘍に対して低い効果を示していた。一方、α-GalCerを負荷したES-DC-OVAは有意差を持って生存期間を約2倍延長させる効果を示し、さらに、SLCをOVAと同時に発現するES-DCにα-GalCerを負荷したものを用いると、治療したマウスの40%が腫瘍細胞を拒絶するという効果が観察された。腫瘍特異抗原を発現させた樹状細胞にα-GalCerを負荷し生体内に投与する治療法が、腹膜播種した悪性腫瘍の治療に有効である事、SLCを腫瘍抗原と同時に発現するES-DCを治療に用いることにより、治療効果を高められることが示された。

9.Daiki Fukuma, Hidetake Matsuyoshi , Shinya Hirata , Akari Kurisaki , Yutaka Motomura, Yoshihiro Yoshitake, Masanori Shinohara, Yasuharu Nishimura, Satoru Senju. Cancer prevention with semi-allogeneic ES cell-derived dendritic cells. Biochemical and Biophysical Research Communications 335: 5&#8211;13, 2005

内容
腫瘍抗原を提示するように遺伝子改変された樹状細胞(DC)は、抗癌免疫療法のための有望な手段である。ES細胞に発現ベクターを導入し、続いてDC(ES-DC)に分化誘導することにより、導入遺伝子を発現するトランスフェクタントDCを作製することができます。この技術の将来の臨床応用では、患者と遺伝的に同一のヒトES細胞が利用できないことが問題となるでしょう。ただし、ほとんどの場合、HLA対立遺伝子の一部をレシピエントと共有する半同種異系ES細胞が利用可能であると予想されます。本研究では、半同種異系マウスに移植されたモデル腫瘍抗原(OVA)発現マウスES-DCがOVA反応性CTLを強力にプライミングし、OVA発現腫瘍のチャレンジに対する有意な防御を誘発することを観察しました。 グランザイムBの特異的阻害剤であるSPI-6を過剰発現させるためのES-DCの遺伝子改変は、半同種異系レシピエントマウスにおいて抗原特異的CTLをプライミングする能力をさらに増強した。これらの結果は、ES-DCが抗がん免疫療法の新規手段としての可能性を示唆された。

免疫アレルギー関係

1.Senju S、Hirata S、Matuyoshi H、Masuda M、Uemura Y、Araki K、Yamamura K、Nishimura Y.Generation and genetic modification of dendritic cells derived from mouse embyonic stem cells.Blood 101:3501-3508、2003

内容

2.Senju S、Matuyoshi H、Hirata s、Nishimura Y.Cellular vaccination with genetically modified dendritiv cells derived from mouse ES cells.J.Invest.Dermatol 121:1241、2003

内容

3.Hirata S、Senju S、Matsuyoshi H、Fukuma D、Uemura Y、Nishimura Y.Prevention of experimental autoimmune encephalomyelitis by transfer of embryonic stem cell-derived dendritic cells expressing myelin oligodendrocyte glycoprotein peptide along with TRAIL or programmed death-1 ligand.J Immunol.2005 Feb 15; 174(4):1888-97.

内容

4.Hirata S、Matsuyoshi H、Fukuma D、Kurisaki A、Uemura Y、Nishimura Y、Senju S Involvement of regulatory T cells in the experimental autoimmune encephalomyelitis-preventive effect of dendritic cells expressing myelin oligodendrocyte glycoprotein plus TRAIL、Journal of Immunology、178(2):918-925; 2007

内容

5.Senju S、Suemori H、Zembutsu H、Uemura Y、Hirata S、Fukuma D、Matsuyoshi H、Shimomura M、Haruta M、Fukushima S、Matsunaga Y、Katagiri T、NakamuraY、Furuya M、Nakatsuji N、Nishimura Y.Genetically manipulated human embryonic stem cell-derived dendritic cells with immune regulatory function、Stem Cells、25:2720-2729; 2007

内容

6.松吉 秀武, 千住 覚, 西村 泰治:ES細胞由来の樹状細胞による免疫制御.感染、炎症、免疫 34:122-129;2004

内容
樹状細胞(DC)に抗原遺伝子と共にケモカイン遺伝子を発現させることにより、生体内に移入したDCの存在する局所へT細胞を遊走させ、抗原特異的免疫応答を増強できるか否かを検証する。さらにモデル抗原を発現させた腫瘍を拒絶する免疫応答の誘導能について比較検討した。モデル抗原OVA を発現させたES-DCを腹腔内投与することにより、OVAを強制発現させたB16メラノーマに対する有意な腫瘍増殖抑制効果が観察された。さらにSLCを発現させることにより、その効果が著明に増強された。抗原およびケモカイン遺伝子を共発現させたES-DCを使用することにより、抗原特異的免疫増強療法が可能であり、抗腫瘍免疫療法に利用できるものと考えられた。

7.松吉 秀武, 後藤 英功:当院における通年性アレルギー性鼻炎に対する炭酸ガスレーザーによる短期治療成績:耳鼻咽喉科・頭頸部外科83 (4):305-311; 2011

内容
今回当院において薬剤無効の通年性アレルギー性鼻炎症例に対して炭酸ガスレーザーによる下甲介粘膜焼灼術を行い、その治療効果の評価を行った。同時に一側のみ焼灼術を行った場合と、両側を行った場合との成績の検討も行った。術後2カ月目の有効率 (両側施行例) は鼻閉85%、鼻汁72.7%、くしゃみ78.9%であった。他報告と比較し、ほぼ同程度の治療成績であった。術前後でのVASスコアを症状別に比較したところ、鼻閉が主訴の場合については下甲介粘膜焼灼術を両側施行すべきと考えた。また鼻汁、くしゃみについては一側のみの治療でも有効であると考えられた。

頭頸部腫瘍関係

1.松吉 秀武, 蓑田 涼生, 湯本 英二:頸下腺腫瘍についての臨床像および診断・治療に関する検討.頭頸部外科16(1):69-76;2006

内容
当科にて1998年から2005年の間に治療を行った顎下腺腫瘍33例を対象とした。良性腫瘍は17例で、多形腺腫16例、血管腫1例であった。悪性腫瘍は16例で腺様嚢胞癌5例、粘表皮癌4例、腺癌2例、多形腺腫由来癌2例、扁平上皮癌、筋上皮癌、悪性リンパ腫がそれぞれ1例であった。顎下腺腫瘍の中で悪性腫瘍の占める割合は48.5%と比較的高かった。術前に穿刺吸引細胞診を行い、正診率は、84%であった。敏感度は66.7%、特異度は100%であった。良性腫瘍に対して顎下腺摘出術を行い、再発は認めていない。癌腫に対しては摘出術と頸部郭清術行い、累積5年生存率は81.3%と比較的良好な成績であった。予防的頸部郭清の領域については肩甲舌骨筋上郭清を行うことが望ましいと考えられた。治療成績向上のためには遠隔転移に対する全身化学療法などの開発が必要と考えられた。

2.松吉 秀武, 鮫島 靖浩, 湯本 英二:耳下腺癌に対する予防的頸部郭清についての検討.口腔・咽頭科19(3):347-353; 2007

内容
当科にて1998年から2006年の間に治療を行った耳下腺癌28例を対象として、予防的頸部郭清の適応と範囲について検討した。予防的頸部郭清を施行すべきか否かを決定するための指標としては、FNAB(fine-needle aspirationbiopsy:エコーガイド下の針生検)と術中迅速病理検査を行うことが有用であった。予防的頸部郭清術の適応は、局所がT4aあるいは、FNABまたは術中病理検査にて高悪性度癌が疑われた症例と考えた。予防的郭清の範囲としては、病理学的悪性度に拘わらず、II、III領域が適切な範囲であり、T3以上のT分類が進んだ症例ではII、III、V領域を郭清すべきと判断した。

3.松吉 秀武, 鮫島 靖浩, 蓑田 涼生, 梶原 薫子, 後藤 英功, 林田 桃子, 田中 文顕, 湯本 英二:腫瘍内出血により気道閉塞をきたした副咽頭間隙腫瘍症例.耳鼻咽喉科・頭頸部外科80(6):391-394; 2008

内容
腫瘍内出血により急激に増大し気道狭窄をきたした副咽頭間隙腫瘍の1例を報告した。副咽頭間隙腫瘍が腫瘍内出血により急激に増大し、気道閉塞をきたしという報告は本邦には存在せず、本症例は稀な症例であると考えられた。副咽頭間隙腫瘍がこのような生命に関わる病態に急変する可能性があることを念頭におく必要があると考えた。

4.松吉 秀武, 湯本 英二:化学療法後にSIADHをきたした上咽頭癌症例.耳鼻臨床101:849-853; 2008

内容
化学療法後にSIADH(抗利尿ホルモン不適合分泌症候群)をきたした比較的稀な症例を経験したので報告する。症例は51歳男性。上咽頭癌、肺転移にて平成12年に放射線化学療法を施行。TPF(Docetaxel+CDDP+5-FU)療法を平成18年7月下旬から1コース行った後、8月上旬より意識レベルが低下した。血清Na値117mEq/lであり、診断基準により、SIADHと診断した。Na補正、水制限、ステロイド内服にて血清Naは130 mEq/l程度に保たれ、9月下旬に退院となった。本症例はDocetaxelとCDDP使用後に発症したことから、薬剤性SIADHと考えた。本症による低Na血症を念頭に置き、化学療法後の電解質バランスに対する十分な注意が必要である。

5.松吉 秀武, 鮫島 靖浩, 湯本 英二:副咽頭間隙腫瘍例の手術適応についての検討.耳鼻臨床102:57-61; 2009

内容
副咽頭間隙に発生する腫瘍は全頭頸部腫瘍の0.5%を占め、比較的まれな腫瘍である。その70-80%は良性で、20-30%が悪性とされている。病理組織は神経鞘腫、多形腺種、傍神経腫などが大部分を占めている。副咽頭間隙には重要な血管や神経が存在しており術後合併症が問題になることがしばしばある。これに対して手術適応についての詳細な検討が少ないのが現状である。今回、当科を受診した副咽頭間隙腫瘍症例を対象として、その存在部位(茎突前区と茎突後区)に着目し、本症の手術適応について検討した。茎突前区の腫瘍は、悪性腫瘍や腫瘍内出血を起こし気道閉塞をきたすような症例が含まれており、早期に手術を行うべきである。茎突後区の腫瘍は、経過観察を行っても増大傾向にあるものは少ない。このため大きさの変化、症状をみながら手術適応を慎重に見極めるべきである。術後合併症としてのFirst Bite Syndromeは難治性であり、茎突前区、茎突後区に拘わらず副咽頭間隙腫瘍の手術を行う場合には十分な術前の説明、発症させないような手術操作が必要である。

6.村上大造, 松吉 秀武, 蓑田 涼生, 鮫島 靖浩, 湯本 英二:小児・若年者(19歳以下)甲状腺乳頭癌の3症例.頭頸部外科.19(1); 73-78; 2009

内容
今回われわれは3例の小児・若年者(19歳以下)甲状腺乳頭癌症例を経験し、主に治療方針について文献的考察を加えて報告する。3症例とも広範な両側頸部リンパ節転移を有し、1例に多発性肺転移、また、残りの2例にも肺野に小結節陰影を認めた。全例に甲状腺全摘出術、両側頸部郭清術を行い、1例は患側の反回神経浸潤を認めたため、神経切除のうえ神経再建術を行った。また、全例、術後にI131大量療法を施行した。多発性肺転移例は現在も肺野に結節陰影を認めているが、治療後16年経過し明らかな増大傾向はない。また、1例に術後鎖骨下リンパ節にI131の集積を認めたが、リンパ節径の増大傾向やサイログロブリン値の上昇がないため、現在は外来にて厳重経過観察を行っている。全例生存し、日常生活に支障を来す合併症は認めていない。小児・若年者甲状腺乳頭癌の場合、腺内転移、リンパ節転移、肺転移の頻度が成人症例よりも高いという特徴がある。そのため、甲状腺全摘出、徹底した頸部郭清術を行い、必要に応じてI131大量療法を施行する必要があると考えられる。

7.増田 聖子, 蓑田 涼生, 松吉 秀武, 湯本 英二:広範な気管合併切除を行った甲状腺原発扁平上皮癌の1例.日本気管食道科学会会報.60(5); 440-445; 2009

内容
甲状腺原発扁平上皮癌は稀な疾患であり、その予後は非常に悪いことが知られている。今回2年以上再発なく経過良好であった甲状腺扁平上皮癌の1例を経験したので報告する。症例は68歳男性。前頸部腫瘤を自覚したため近医を受診した。腫瘤は数日で急激に増大し、軽度の呼吸困難感が出現した。CTにて甲状腺右葉に腫瘍を認め、細胞診で低分化型扁平上皮癌の診断を得た。当科紹介となり、発症から17日目に甲状腺全摘、右根治的頸部郭清術、上縦隔郭清術、気管環状切除および端々吻合による再建を行った。気管切除は9気管輪に及んだが、縫合不全や誤嚥などの合併症は見られなかった。その後化学療法、放射線照射を行い、術後2年4カ月再発なく経過良好である。発症早期に徹底した根治手術を行えたことが、予後良好であった一因と考えられた。また気管端々吻合による合併症予防を考慮した術後管理が重要であると考えられた。

8.松吉 秀武, 岩崎 宏:少量UFT®にて寛解を得られた高齢者進行舌癌例.耳鼻臨床111:639-644; 2018

内容
手術不能とされた高齢者進行舌癌(StageⅣA)に対して少量UFT®にて寛解をえられた症例を経験した。高齢化社会における頭頸部癌治療において今後、標準療法が困難な症例の増加が予測される。今回、高齢者進行舌癌に対して寛解をえられた要因としては、低用量UFTによる腫瘍細胞障害性効果、免疫賦活効果に加え、併用した捕中益気湯® が老化による抗腫瘍免疫の低下を回復させた効果が考えられる。 またUFT®は経口5-Fuのプロドラッグであり、5-Fuと同様にセファランチン®と相互作用を示し、腫瘍のDNAの合成を長時間阻害したことが、本症例に対してUFT®の有効性を高めた理由であると考えた。このように低用量化学療法と腫瘍免疫に有効な漢方薬、UFT®の効果を高めるセファランチンを併用することで、患者の生活の質を落とすことなく、癌との共存、あるいは延命治療が行える可能性が示唆された。

9.松吉秀武、渡利昭彦、佐藤祐司、杉本卓矢、牧嶋和見:硬口蓋の巨大な鼻口蓋管嚢胞の1例. 耳喉頭頸 70(11): 751-754, 1998

内容
硬口蓋に著明な膨隆をきたした鼻口蓋管嚢胞の1例を経験した。硬口蓋の膨隆をきたす疾患では、その解剖学的特徴をふまえて鑑別診断を行うことが重要であると考えた。本性の特徴として、経口蓋的に嚢胞を全摘し、骨欠損部には骨膜付粘膜弁を戻す手術方法にて良好な結果を得た。

睡眠時無呼吸関係

1.松吉秀武, 後藤英功, 山田卓生:耳鼻咽喉科無床診療所における自動的持続陽圧呼吸療法(autocontinuous positive airway pressure)管理についての臨床的検討. 耳鼻と臨床 65巻6号: 167-174, 2019

内容
無床診療所である当院にて導入した auto CPAP症例の長期継続に影響を与える因子に ついて臨床的検討を行った。全体の継続率は1年後で 83.7%、5年後で 70.6%、10年後 で 60.0%であり、過去の報告と比較してやや良好であった。離脱は137例でありマスクが原因であった症例が81例(59.1%)であった。このうち、鼻閉が19例と最も多くを占めていた。そのため鼻閉改善手術の有効性について検討した。鼻閉の自覚がなく鼻閉改 善手術を未施行の症例(A群442例)と、鼻閉があり手術を施行した症例(B群47症例) と、鼻閉があるが同手術未施行症例(C群29症例)を比較検討した。8年後の継続率はA群で62.8%、B群83.9%、C群で25.9%であった。鼻閉改善手術を施行したB群において有意差をもってCPAP継続率が高値であった。CPAP継続率を高めるには鼻閉改善手 術を含めた鼻閉の管理が重要であると考えられた。

2.松吉秀武, 後藤英功, 山田卓生:自動的持続陽圧呼吸療法(auto continuous positive airway pressure)管理中に脈圧、低呼吸指数が上昇し大動脈弁閉鎖不全が判明した睡眠呼吸障害の1例. 耳鼻と臨床 66巻3号: 74-78, 2020

内容
CPAPを使用することにより無呼吸、低呼吸を制御できていたにもかかわらず、脈圧と低呼吸の上昇を来たし、大動脈弁閉鎖不全と診断された比較的まれな睡眠呼吸障害の1例を経験したので報告する。症例は63歳、男性。昼間の眠気を主訴として受診。簡易無呼吸検査にて無呼吸低呼吸指数が41.1でありCPAPを開始した。約4年後より徐々に脈圧と低呼吸の上昇を来した。原因は大動脈弁閉鎖不全と、それに伴う左心不全と考えられた。さらに睡眠中に臥床状態となるため、下肢から心臓に戻る静脈還流が増加し、肺がうっ血状態となり、肺における迷走神経を刺激し、過換気反射を誘発した。このためPCO2が減少し、呼吸を刺激するレベル以下になり呼吸中枢が抑制され、低呼吸が増悪したと考えられた。CPAP使用中の症例に対して、無呼吸の経過を診るのみではなく脈圧、低呼吸に変動がないかを慎重に診ていく必要があると考えられた。

3.松吉秀武, 山田卓生, 後藤英功, 川上和伸:自動的持続陽圧呼吸療法(auto continuous positive airway pressure)管理中に低呼吸指数の上昇とチェーンストーク呼吸を来し、陳旧性心筋梗塞と慢性心不全が判明したため、順応性自動制御換気(adaptive servo-ventilation)を導入した睡眠呼吸障害の1例. 耳鼻と臨床 68巻1号: 61-68, 2022

内容
閉塞性睡眠時無呼吸症候群に対してCPAP使用と鼻閉改善手術を施行することにより無呼吸、低呼吸を制御できていたにもかかわらず、CPAP開始から12年後に急激に低呼吸の上昇を来し、チェーンストーク呼吸を認めた。陳旧性心筋梗塞、慢性心不全と診断され、冠動脈手術後にも中枢性無呼吸が持続するためにASVを導入した比較的まれな睡眠呼吸障害の1例を経験したので報告する。症例は77歳、男性。昼間の眠気を主訴として受診。簡易無呼吸検査にて無呼吸低呼吸指数が44.0でありCPAPを開始した。約8年前より緩徐な脈圧上昇と急激な低呼吸の上昇を来した。またチェーンストーク呼吸を認めた。陳旧性心筋梗塞、慢性心不全により中枢性無呼吸へと移行したと考えた。冠動脈手術を施行されたが、心機能、無呼吸が回復せず、ASVを導入し無呼吸低呼吸指数は9.9となり、ASV管理を行っている。CPAP使用中の症例に対しては、無呼吸低呼吸指数を診るのみではなく低呼吸に変動がないか、チェーンストーク呼吸など生命に危険を及ぼす呼吸状態がないかを慎重に診ていく必要があると考えられた。

顔面神経関係

1.江川清文, 松吉秀武:Ramsay Hunt 症候群. 西日本皮膚科 82(6):405-406, 2020

内容
患者:77 歳,女性
主訴:右耳介の疼痛,発赤,腫脹と水疱
現病歴:右耳介に,初診の 1 週間前より疼痛が,2 日前より発赤と水疱が出現した。
初診時現症:右耳介に疼痛,発赤,腫脹と水疱を認めた(図 1 )。末梢性顔面神経麻痺や難聴,口腔内病変はなかった。
初診時診断と治療経過:水痘・帯状疱疹ウイルス(varicella-zoster virus,VZV)抗原検出キットを用いて陽性であり,耳介帯状疱疹と診断した。アメナメビル 400 mg/ 日分 1 とアセトアミノフェン 1200 mg/日分 3 内服を開始して 4 日後(第 6 病日)に末梢性顔面神経麻痺を来したため,後遺症対策から以後の治療を耳鼻咽喉科に委ねた。第 8 病日,柳原法1) による顔面神経麻痺スコアは 40 点満点中 4 点(高度麻痺).プレドニゾロン(PSL)60 mg/日分 3 内服から漸減し,1 週間後(第 15 病日)に顔面神経管開放術適応の有無が検討されたが,麻痺スコアが 22 点と改善し,神経筋電図検査(ENoG)値が 33.5%であったため1),PSL の予定内服終了後はシアノコバラミン 1500 μg/日とアデノシン三リン酸二ナトリウム水和物 300 mg/日の分 3 内服で経過観察とした。12 週経過時,麻痺スコアは 40 点(治癒)で,疼痛はない。